戸倉質問役
黒岩さん、うちの取引先の運行管理やってる知り合いから「2024年から運転手の残業規制、変わったんですよね」って言われたんですけど、正直ピンと来てなくて。えっ、うちみたいな軽バン1台の個人事業主にも関係あるんですか?
黒岩解説役
直接関係あるのは従業員を雇っている事業者さんですが、業界全体の話としては軽貨物にも無縁ではないですよ。今日お話しする「働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)」は、まさにその2024年の規制変更に対応するための助成金です。戸倉さんのところは今、従業員は雇っていますか?
戸倉質問役
いや、うちは自分一人です。将来的にドライバーを雇うことになったら関係してくるってことですか?
黒岩解説役
そのとおりです。今日は制度の中身と、軽貨物事業者がどう関わってくるかを整理してお話ししますね。まず背景から説明します。
運送業も対象になった「時間外労働の上限規制」
黒岩解説役
2019年(中小企業は2020年)から、残業時間には法律上の上限が設けられました。原則は月45時間・年360時間です。ただし建設業・運送業・医師・砂糖製造業は業界の特殊事情があるとして、この規制の適用が猶予されていたんです。
戸倉質問役
あ、それ聞いたことあります。「2024年問題」ってやつですよね?
黒岩解説役
まさにそれです。その猶予が2024年4月に切れて、運送業にも上限規制が本格適用されました。トラック運転者の場合は年960時間という特別な上限が別途定められています。この規制対応にかかる費用を、国がサポートするのが今日紹介する助成金です。
戸倉質問役
なるほど、規制がきつくなった分、対応にお金がかかるから助成金でバックアップするってことですね。
黒岩解説役
そういうことです。もともとこのコースは「適用猶予業種等対応コース」という名前でしたが、令和8年度(2026年度)からは「業種別課題対応コース」という名称に変わっています。対象業種の呼び方が変わっただけで、運送業を含む考え方は変わっていません。制度の位置づけを図にまとめたので見てください。

戸倉質問役
この助成金の名前、うちのポータルサイトだと「適用猶予業種等対応コース」って出てたんですけど、それは旧名称ってことですね。
黒岩解説役
はい、中身は同じ制度の延長です。名前が変わった経緯を知らずに検索すると迷子になるので、まずそこを押さえておきましょう。次は制度そのものの概要をお話しします。
業種別課題対応コースとは
戸倉質問役
それで、具体的にどういう制度なんですか?
黒岩解説役
生産性を上げながら、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバル制度の導入といった取り組みをする中小企業事業主を支援するコースです。取り組みにかかった経費の一部を、達成した成果目標に応じて助成します。厚生労働省と各都道府県労働局が実施しています。
戸倉質問役
「達成した成果目標に応じて」っていうのがちょっとわかりにくいんですけど。
黒岩解説役
「残業時間をここまで減らす」「有給休暇の制度をこう変える」といった目標をあらかじめ選んで届け出て、それを実際に達成したら助成金が出る仕組みです。目標を選ばずに機材だけ買っても対象にはなりません。取り組みと成果目標はセットで考える必要があります。
戸倉質問役
単に「デジタコ買ったから助成金ください」じゃダメってことですね。
黒岩解説役
そうです。デジタコの導入は「改善事業(取り組み)」であって、それによって残業時間を減らす、有給を取りやすくするといった「成果目標」の達成とセットで初めて助成の対象になります。ここを混同している事業者さんは多いので、しっかり区別してください。次は具体的な金額の話に入りましょう。
支給額と補助率
戸倉質問役
一番気になるところです。実際いくらもらえるんですか?
黒岩解説役
支給額は次の2つのうち低い方になります。ひとつは成果目標ごとに決まっている上限額と加算額の合計、もうひとつは対象経費の合計額に補助率をかけた金額です。補助率は原則4分の3ですが、常時使用する労働者数が30人以下で、労務管理用ソフトや機器、デジタコなどの導入経費が30万円を超える場合は5分の4まで引き上がります。
戸倉質問役
いずれか低い方ってことは、上限額が高くても実際に使った経費が少なければその分しかもらえないってことですか?
黒岩解説役
そのとおりです。ここを勘違いして「上限いっぱいもらえる」と思い込む事業者さんが多いんですが、実際にかかった経費の範囲でしか支給されません。まず成果目標ごとの上限額を表にまとめます。運送業等が選べる目標を中心に載せますね。
| 成果目標 | 内容 | 助成上限額 |
|---|
| ①時間外・休日労働の上限設定(初回) | 月80時間超から月60時間以下に短縮 | 250万円 |
| ①時間外・休日労働の上限設定(初回) | 月80時間超から月60〜80時間に短縮 | 150万円 |
| ①時間外・休日労働の上限設定(初回) | 月60〜80時間から月60時間以下に短縮 | 200万円 |
| ①時間外・休日労働の上限設定(2回目以降) | 前年度水準を維持 | 25万円 |
| ①時間外・休日労働の上限設定(2回目以降) | 前年度から月60時間以下にさらに短縮 | 100万円 |
| ②所定外労働時間の削減(2026年度新設) | 労働者1人あたり5〜10時間未満の削減 | 50万円 |
| ②所定外労働時間の削減(2026年度新設) | 労働者1人あたり10時間以上の削減 | 100万円 |
| ③年次有給休暇の計画的付与の導入 | 新規導入 | 25万円 |
| ④時間単位年休・特別休暇の導入 | 新規導入 | 25万円 |
| ⑤勤務間インターバルの導入(運送業等・新規) | 10〜11時間未満 | 150万円 |
| ⑤勤務間インターバルの導入(運送業等・新規) | 11時間以上 | 170万円 |
戸倉質問役
結構細かく分かれてるんですね。運送業は勤務間インターバルの基準時間が他の業種と違うんですか?
黒岩解説役
いいところに気づきましたね。勤務間インターバルは運送業等と指定病院等だけ10時間以上が基準で、それ以外の業種は9時間以上が基準です。運転業務の性質上、休息時間を長めに取る前提になっているんです。さらに、成果目標に賃金引き上げを組み合わせると加算があります。引き上げ率3%以上・5%以上・7%以上の3段階で、常時使用する労働者数が10人以上30人以下の事業場では、対象人数が7〜10人で7%以上の賃上げを実施すると240万円が加算されます。
戸倉質問役
え、例えばどれくらいの金額になるんですか?
黒岩解説役
モデルケースで計算してみましょう。36協定の時間外労働を月80時間超から月60時間以下まで一気に短縮した場合の上限額が250万円、そこにドライバー7〜10人を対象に7%以上の賃上げを実施した加算240万円を組み合わせると、合計490万円が上限額の枠になります。これはあくまで一例で、実際の支給額は対象経費の3/4(または4/5)と比較して低い方になる点は忘れないでください。
戸倉質問役
なるほど、上限490万円っていうのはそういう組み合わせなんですね。じゃあうちみたいに1人だけの事業だとそもそも対象になるのか気になります。
対象になる軽貨物事業者・ならない事業者
黒岩解説役
正直にお答えすると、戸倉さんのように黒ナンバー1台だけで従業員のいない個人事業主は、今のままでは対象外です。この助成金は「労働者を1人以上雇用していること」が前提になっています。
戸倉質問役
えっ、そうなんですか。それは知らなかったです。
黒岩解説役
制度の性質上、時間外労働や有給休暇といった「労働者の働き方」を改善する取り組みが対象なので、雇用している労働者がいないと成果目標そのものが成立しないんです。ここは公式FAQでもはっきり書かれていて、従業員のいない一人事業主は対象外と明記されています。まず対象業種の要件を表にします。
| 業種区分 | 要件 | 中小企業の範囲 |
|---|
| 運送業等 | 自動車運転業務に従事する労働者を雇用する事業主(トラック・タクシー・バスなど) | 資本金3億円以下または常時使用労働者300人以下 |
| 建設業 | 工作物の建設の事業を主たる事業とする事業主 | 資本金3億円以下または常時使用労働者300人以下 |
| 病院等 | 医師が勤務する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院 | 常時使用労働者300人以下 |
| 砂糖製造業 | 鹿児島県・沖縄県で砂糖を製造する事業を主たる事業とする事業主 | 資本金3億円以下または常時使用労働者300人以下 |
| 情報通信業 | 日本標準産業分類の大分類「情報通信業」を主たる事業とする事業主 | 資本金3億円以下または常時使用労働者300人以下 |
| 宿泊業 | 日本標準産業分類の大分類「宿泊業,飲食サービス業」のうち中分類「宿泊業」を主たる事業とする事業主 | 資本金3億円以下または常時使用労働者300人以下 |
戸倉質問役
「運送業等」に軽貨物も入るんですか?条文とか読むと大型トラックのイメージが強くて。
黒岩解説役
労働基準法140条1項の「自動車運転の業務に従事する労働者を雇用する中小企業事業主」という要件で、車両の大きさやナンバーの種類は問われません。軽貨物でも従業員としてドライバーを雇用していれば運送業等に該当します。問題は雇用の実態なんです。
黒岩解説役
軽貨物業界だと、直接雇用のドライバーではなく業務委託契約のドライバーで運行している事業者さんが多いですよね。業務委託契約のドライバーは労働基準法上の労働者ではないので、この助成金の対象人数にも、成果目標の対象にもカウントできません。もし直接雇用の従業員が1人もおらず、全員が業務委託ドライバーだという場合は、実質的に対象外と考えてください。典型的なケースを整理しました。
| ケース | 対象かどうか | 理由 |
|---|
| 黒ナンバー1台のみ、従業員なしの個人事業主 | 対象外 | 労働者を1人も雇用していない |
| ドライバーを2〜3人直接雇用している軽貨物事業者 | 対象になりうる | 労働者を雇用しており業種要件も満たす |
| 全ドライバーが業務委託契約の軽貨物事業者 | 対象外の可能性が高い | 業務委託は労働基準法上の労働者に該当しない |
| 法人成りして事務スタッフを1人雇用した軽貨物事業者 | 対象になりうる | 事務職でも労働者を雇用していれば要件を満たす |
| 家族を専従者として働かせている個人事業主 | 要確認 | 実態が労働者と言えるかは指揮命令関係や賃金の実態による |
戸倉質問役
最後の家族専従者のところ、うちも将来的に配偶者を手伝わせようか考えてたんですけど、「要確認」ってどういうことですか?
黒岩解説役
家族従業員が労災保険の適用対象になっているか、実際の働き方が雇用契約と言える実態になっているかによって判断が変わります。ここは自己判断せず、申請前に労働局か社会保険労務士に個別で確認してください。曖昧なまま申請すると不支給になるリスクがあります。次は共通の要件をお伝えします。
黒岩解説役
あります。労災保険の適用事業主であること、すべての対象事業場で年次有給休暇の管理簿を作成していること、常時10人以上の労働者を使用する事業場では年次有給休暇の時季指定に関する規定を含む就業規則を作成し、あらかじめ所轄の労働基準監督署長に届け出ていることが必要です。加えて、過去5年間に他の助成金の不正受給歴がないこと、過去1年間に労働基準関係の法令違反がないことも条件に入っています。
戸倉質問役
けっこう真面目にやってないと申請すらできないんですね。
黒岩解説役
そこは助成金全般に共通する考え方です。労務管理がきちんとできている事業者を後押しする制度だと考えてください。次はお金を何に使えるかの話に移りましょう。
何にお金を使えるか
戸倉質問役
具体的にはどんなものが対象経費になるんですか?
黒岩解説役
改善事業として認められているのは、労務管理担当者への研修、労働者への研修や周知・啓発、社会保険労務士など外部専門家によるコンサルティング、就業規則・労使協定等の整備、人材確保に向けた取り組み、労務管理用ソフトウェアの導入・更新、労務管理用機器の導入・更新、デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新、そしてこれらに該当しない労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新の9項目です。このうち1つ以上を実施することが条件になります。
戸倉質問役
軽貨物の現場だと、具体的にはどれが使えそうですか?
黒岩解説役
一番使いやすいのはデジタコですね。公式の案内でも「デジタル式運行記録計の導入で運転日報や出勤簿の作成が自動化され、事務作業時間が削減される」という活用例が示されています。ほかには勤怠管理ソフトや配車管理システムといった労務管理用ソフトウェアも対象になります。配送経路の最適化に使うカーナビゲーションシステムも、労働能率の増進が説明できれば対象になり得ます。
黒岩解説役
いくつか注意点があります。同一機種や能力が同等以下の機種への買い替えは対象外です。それからパソコン・タブレット・スマートフォン本体は原則として対象外とされています。乗用車の導入・更新も原則対象外です。単なる経費削減目的の設備(LED電球への交換など)や、単に快適性を高めるだけの設備(エアコンの更新、内装工事など)も対象になりません。図でまとめておきます。

戸倉質問役
なるほど、デジタコみたいに「労働時間の管理や削減に直接効く」ものじゃないとダメってことですね。
黒岩解説役
まさにそうです。「労働能率の増進に資する」というのは、業界知識のない人にも理解できる形で、作業時間の削減効果を客観的に説明できることが条件になります。単に便利、単に快適、というだけでは通りません。次はどの成果目標を選ぶかの話に移りましょう。
成果目標はどれを選ぶか
戸倉質問役
さっき出てきた成果目標って、全部の中からいくつでも選べるんですか?
黒岩解説役
選べる目標は業種によって違います。運送業等が選べるのは、①時間外・休日労働の上限設定、②所定外労働時間の削減、③年次有給休暇の計画的付与の導入、④時間単位年休・特別休暇の導入、⑤勤務間インターバルの導入の5つです。⑥週休2日制の推進は建設業のみ、⑦医師の働き方改革の推進は病院等のみが対象なので、運送業では選べません。
戸倉質問役
①と②はさっき出てきた「月60時間以下にする」ってやつと、「所定外労働時間を減らす」ってやつですよね。この2つは両方選べるんですか?
黒岩解説役
そこは注意が必要で、①と②は同時に選択できません。どちらか一方を選ぶ形になります。②は2026年度に新しく設けられた目標で、36協定の時間数そのものより、実際の所定外労働時間を前年同月比で1人あたり5時間以上減らすことを目指す内容です。すでに36協定の時間数が十分低い事業者さんには②の方が現実的な場合もあります。
戸倉質問役
どっちを選ぶかはどう決めればいいんですか?
黒岩解説役
現状の36協定の設定時間と、実際の残業実態の両方を見て判断します。36協定の時間数自体に余裕がある会社は①で大きく短縮した方が上限額は高くなりやすいですし、すでに時間数は低めだけど実労働時間を細かく削りたい会社は②が向いています。ここは個社ごとに状況が違うので、申請前に社会保険労務士や労働局に相談するのがおすすめです。次は申請に必要な書類の話です。
必要書類と実務
戸倉質問役
申請するとなったら、何を揃えればいいんですか?
黒岩解説役
大きく分けて、事業主としての実在確認の書類、労務管理の実態を示す書類、成果目標に対応する書類の3種類が必要になります。実務で必要になるものを整理しますね。
申請に必要な主な書類
交付申請書(様式第1号)と、業種に応じた続紙。労災保険関係成立票の写しなど労災保険の適用を確認できる書類。資本金や常時使用労働者数を確認できる書類(登記事項証明書、労働者名簿など)。36協定の届出書の写し(成果目標①・②を選ぶ場合)。就業規則の写し(常時10人以上の場合は労働基準監督署への届出印つき)。年次有給休暇管理簿のひな形または運用状況がわかる資料。個人事業主の場合は開業届の写しや、貨物軽自動車運送事業経営届出書の写しなど業種を確認できる書類。
戸倉質問役
貨物軽自動車運送事業経営届出書の写しも必要になるかもしれないんですね。
黒岩解説役
はい、業種要件を確認するための添付書類として求められることがあります。運輸支局に提出したときの控えは大事に保管しておいてください。電子申請もできて、Jグランツというシステムから手続きできます。紙の申請書を郵送するより手間が減るので、初めて申請する方にもおすすめです。
戸倉質問役
賃上げ加算を使う場合は、何か別に必要な書類ってあるんですか?
黒岩解説役
賃金台帳など、実際に賃金を引き上げたことがわかる書類が必要になります。対象労働者は雇い入れ日の翌日から交付申請日までの期間が3か月を超えない人は対象にできないので、給与明細や雇用契約書で雇用開始日を確認しておく必要もあります。次は申請から入金までの流れを見ていきましょう。
申請から入金までの流れ
手続きの流れ
- 1- ①交付申請書を提出する 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に、成果目標や実施予定の改善事業を記載した交付申請書を提出します。 - ②交付決定通知を受け取る 審査を経て交付決定通知が届きます。原則1か月以内が目安です。 - ③改善事業を実施する 交付決定日以降に取り組みを始めます。交付決定より前に契約したり支払ったりした経費は対象外になるので注意してください。 - ④支給申請書を提出する 改善事業の実施結果と、成果目標を達成した証拠書類をまとめて支給申請書を提出します。 - ⑤支給決定通知を受け取る こちらも原則1か月以内が目安です。 - ⑥助成金を受け取る 支給決定後に振り込まれます。
戸倉質問役
交付決定前に買っちゃったデジタコは対象にならないってことですね。それは知らずにやりがちな気がします。
黒岩解説役
そうなんです、これは軽貨物の事業者さんに限らずよくある失敗です。「先に導入して後から申請すればいい」と考えて先走ると、丸ごと対象外になります。必ず交付決定を待ってから契約・発注してください。次はお金が実際にいつ入るかという、資金繰りの話をします。
お金が入るまでの資金繰り
戸倉質問役
さっきの流れを見ると、けっこう時間かかりそうですね。
黒岩解説役
そこが一番大事なポイントです。この助成金は完全な後払いです。交付申請から交付決定までに約1か月、そこから改善事業を実施して、支給申請してからさらに約1か月かかって、ようやく振り込まれます。実施期間は交付決定の日からその年度の1月31日までと定められています。
⚠ デジタコ代・研修費は一旦全額自己負担
デジタコや労務管理ソフトの導入費用は、いったん全額を事業主が立て替えて支払う必要があります。助成金の入金は改善事業の実施と成果目標の達成が確認できた後です。手元資金が少ない状態で申請すると、導入から入金までの数か月間、資金繰りが厳しくなる可能性があります。
戸倉質問役
490万円もらえる想定で先にデジタコ買っちゃったら、資金繰りが詰まりそうですね。
黒岩解説役
まさにそのリスクがあります。導入費用の見積もりを取ったら、入金までの数か月分を運転資金として確保できるか、先に確認してください。手元資金だけでは厳しい場合は、日本政策金融公庫の融資を使ってつなぎ資金を用意する事業者さんも多いです。助成金はあくまで後から戻ってくるお金だと割り切って、資金計画を立てることが何より大事です。次は審査で見られるポイントをお話しします。
審査で見られるポイント
黒岩解説役
提出すれば自動的に支給される制度ではなく、内容の審査があります。成果目標の設定内容や、改善事業の内容が「労働能率の増進に資する」と客観的に説明できるかが見られます。
審査を通すためのポイント
成果目標は現実的に達成可能な水準で設定すること。36協定の時間数を無理に低く設定しすぎると、実際の運行に支障が出て達成できなくなります。改善事業の効果は「なぜ労働時間の削減につながるのか」を具体的に説明できるようにしておくこと。デジタコなら「運転日報の作成が自動化されて事務作業が何時間減るか」まで書けると説得力が上がります。就業規則や36協定の届出は交付申請の前にきちんと済ませておくこと。書類の不備や届出漏れは差し戻しの原因になります。
戸倉質問役
「無理な目標を立てない」っていうのは意外と盲点かもしれないですね。
黒岩解説役
そうなんです。上限額の高い目標を狙って36協定を極端に短く設定してしまうと、繁忙期に対応できずに違反してしまうリスクもあります。助成金の金額だけを見て目標を決めるのではなく、実際の運行体制で無理なく守れる水準を選んでください。次は他の制度との併用について説明します。
他の制度と併用できるか
戸倉質問役
車両の入れ替えも考えてるんですけど、他の補助金と一緒に使えたりしますか?
黒岩解説役
この助成金の対象経費は労務管理や研修、デジタコといった「働き方改革のための取り組み」に限られていて、車両本体の購入費は原則対象外です。ですから、車両購入を対象にした別の補助金と対象経費が重複することは基本的にありません。例えば
CEV補助金はEV軽バンなど車両の導入自体を支援する制度なので、対象経費が異なる分には併用できる可能性があります。
戸倉質問役
EV軽バンに買い替えつつ、デジタコも入れて残業も減らす、みたいな組み合わせもできるってことですか?
黒岩解説役
制度上は経費が重複しなければ可能です。ただし年度ごとに交付要綱や予算の状況が変わるので、実際に両方申請する際は、それぞれの窓口(この助成金なら都道府県労働局、CEV補助金なら次世代自動車振興センター)に、同一事業での重複がないか事前に確認してください。「たぶん大丈夫」で進めず、必ず窓口に確認するのが安全です。次は荷主や元請との関係についてです。
荷主・元請との関係、Gマークについて
戸倉質問役
荷主さんとか元請さんとの関係で、この助成金が関わってくることってありますか?
黒岩解説役
直接的な要件にはなっていませんが、業界の話として関連する制度を押さえておきましょう。トラック運送業界には「Gマーク」と呼ばれる貨物自動車運送事業安全性評価事業があります。国土交通省の説明では、事業用トラックの安全性への取り組みを評価して認定する制度で、認定を受けた事業所は令和7年12月末時点で全事業所の34.4%にあたります。
戸倉質問役
うちも取れたらいいなって思ってたんですけど。
黒岩解説役
そこは大事な点なので正確にお伝えします。Gマークは一般貨物自動車運送事業者を対象にした制度で、貨物軽自動車運送事業、つまり黒ナンバーの軽貨物事業者は対象になっていません。荷主さんから「Gマーク取得事業者を優先します」と言われても、軽貨物単独では制度上取得できない点は知っておいてください。今回の働き方改革推進支援助成金とは別の制度なので、混同しないよう注意しましょう。次は税務上の扱いについてです。
税務・会計の注意点
戸倉質問役
もし490万円もらえたとして、その分丸々使えるお金になるんですか?
黒岩解説役
いいえ、そこは注意が必要です。助成金として受け取ったお金は、税務上は収入(益金)として計上する必要があります。もらったお金がそのまま非課税になるわけではありません。
戸倉質問役
え、じゃあ税金取られる分を見込んでおかないといけないんですね。
黒岩解説役
そうです。助成金収入は原則として受け取った事業年度の所得に含まれ、所得税や法人税の計算対象になります。デジタコなど30万円以上の設備を導入した場合は減価償却の対象になりますが、青色申告をしている個人事業主なら、一定の要件のもとで30万円未満の資産を一括で経費にできる少額減価償却資産の特例が使える場合もあります。金額の大きい設備投資を伴う場合は、事前に顧問税理士に相談しておくと安心です。次は制度の基本情報を一覧にまとめます。
制度の基本情報まとめ
戸倉質問役
最後に、細かい情報を一覧で見せてもらえますか?
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース) |
| 実施機関 | 厚生労働省・各都道府県労働局 |
| 対象地域 | 全国 |
| 対象業種 | 運送業等・建設業・病院等・砂糖製造業・情報通信業・宿泊業の中小企業事業主 |
| 補助率 | 対象経費の3/4(一定条件を満たす場合は4/5) |
| 助成上限額の目安 | 成果目標の組み合わせにより最大数百万円規模(例: 成果目標①250万円+賃上げ加算240万円で490万円) |
| 令和8年度の申請受付開始 | 令和8年4月13日(月) |
| 交付申請期限 | 令和8年11月30日(月)午後5時(予算状況により早期締切の場合あり) |
| 事業実施期間 | 交付決定の日から当該年度の1月31日まで |
| 申請窓口 | 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、働き方改革推進支援センターでも相談可 |
| 公式URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692_00001.html |
問い合わせ先
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)の相談・申請窓口は、事業所を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。制度の内容や必要書類の書き方に迷ったときは、働き方改革推進支援センターでも相談できます。公式サイト(厚生労働省): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692_00001.html
戸倉質問役
申請期限が11月30日なのはわかったんですけど、予算状況で早く締め切られることもあるって、結構シビアですね。
黒岩解説役
国の予算に制約があるため、期限より前に受付を締め切る場合があると公式サイトにも明記されています。使うと決めたら早めに動いた方がいいです。次はよくある質問をまとめて答えていきますね。
よくある質問
戸倉質問役
最後にいくつか確認させてください。まず、軽貨物1台だけの個人事業主は絶対に対象外なんですか?
黒岩解説役
現状の要件では、労働者を1人も雇用していない場合は対象外です。将来ドライバーを直接雇用するタイミングで検討するのが現実的です。
戸倉質問役
業務委託のドライバーさんに手伝ってもらってる場合はどうですか?
黒岩解説役
業務委託契約のドライバーは労働基準法上の労働者に該当しないため、対象人数にも成果目標の対象にもカウントできません。直接雇用の従業員がいるかどうかがポイントです。
戸倉質問役
デジタコを先に自腹で買って、あとから申請するのはアリですか?
黒岩解説役
それはできません。交付決定より前に契約・支払いをした経費は対象外になります。必ず交付決定の通知を受け取ってから発注してください。
戸倉質問役
賃上げ加算だけを目的に、成果目標を達成せずに賃上げだけしても意味ないですか?
黒岩解説役
はい、賃上げ加算はあくまで通常の成果目標に上乗せする形の加算なので、成果目標①〜⑤のいずれかを達成することが前提です。賃上げだけを実施しても単独では助成の対象になりません。
戸倉質問役
今日はかなり整理できました。従業員を雇うタイミングが来たら、また相談させてください。
黒岩解説役
ぜひ。従業員を雇う前の準備段階から相談してもらえると、成果目標の立て方も含めて余裕を持って進められます。
関連リンク・参考資料
戸倉質問役
最後に、参考になるページも教えてください。
黒岩解説役
公式の交付要綱・支給要領・申請様式は厚生労働省のページにまとまっています。細かい要件は年度ごとに変わることがあるので、申請前に必ず最新版を確認してください。
| 資料 | リンク |
|---|
| 制度の公式ページ(厚生労働省) | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692_00001.html |
| 電子申請(Jグランツ) | 公式ページ内のリンクから申請システムへアクセスできます |
| 車両導入なら | CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金) |
戸倉質問役
デジタコとか配車ソフトの話がさっき出てましたけど、実際に導入するとなったら何から手をつければいいんですかね。
黒岩解説役
そこはこの助成金と少し離れますが、配車業務のデジタル化から着手する事業者さんが多いです。[配車業務のDX化、何から始めればよいか](/articles/20)に具体的な進め方をまとめているので、成果目標を検討する段階で読んでおくと、対象経費の効果説明もしやすくなりますよ。
よくある質問
軽貨物1台だけの個人事業主は対象になりますか?
現状の要件では、労働者を1人も雇用していない場合は対象外です。将来ドライバーを直接雇用するタイミングで検討することになります。
業務委託契約のドライバーは対象人数に含められますか?
業務委託契約のドライバーは労働基準法上の労働者に該当しないため、対象人数にも成果目標の対象にもカウントできません。
デジタコを先に購入してから申請できますか?
できません。交付決定より前に契約・支払いをした経費は対象外になります。必ず交付決定の通知を受け取ってから発注する必要があります。
賃上げ加算だけを申請することはできますか?
できません。賃上げ加算は成果目標①〜⑤のいずれかを達成することが前提の上乗せ加算です。賃上げのみでは助成の対象になりません。